私的俳句論(91)

2006年12月06日 20:10

山口青邨(1)

  雨の灯をいたはりあひて魚簗の番

大正15年作。季語は「魚簗/やな」で三夏。

「いたはりあひ」ですから、何かと何かが労り合っていたことになります。それを何と読み取るかなのですが、私は「灯」と「簗番」だと思います。複数の人が番屋に居たのでは、この句の情趣は活きない、そう思うからです。雨音と、魚簗の水音だけの世界に、一つの裸電球(ランプかも知れませんが)と、そして一人の男、でしょうか。夏とは言っても、火を焚きたくなるほどの肌寒さが思われます。

ある人は、この句、一つの灯を二人の男が労り合っている、と読み取るかも知れません。その場合、男達は寡黙であることが求められるでしょう。そして、傍らに置かれた一升瓶と、それぞれの手の中の茶碗酒、でしょうか。

   ◆

これからしばらくは、山口青邨の第一句集(大正11年〜昭和9年の俳句、546句を収載)からの引用になります。子規の後は、筋としては虚子なのでしょうけれど、これは後日の楽しみとさせて戴きます。

引用句典拠/山口青邨著『定本 雜草園』(東京美術/1976年発行)39頁